定員超過利用減算について

定員の定めがある障がい福祉サービスでは、その定員を超えて利用者を受け入れた場合に、定員超過利用減算に該当し減算適用となる場合があります。

利用者1人に対して十分なサービスを行うために必要な広さが、開業する際の指定の要件として決められています。そのような事業所内において、定員を超えているということは、その分1人当たりのスペースが狭くなっているということで、十分なサービスができていない、という判断になるからです。

 

該当するサービスは以下になります。

障がい福祉サービス:

生活介護・自立訓練(機能訓練)・自立訓練(生活訓練)・就労移行支援・就労継続支援A型・

就労継続支援B型・療養介護・短期入所・施設入所支援

障がい児通所支援サービス:

児童発達支援・医療型児童発達支援・放課後等デイサービス・福祉型障害児入所施設・

医療型障害児入所施設

 

定員超過利用減算で算定される単位

基本報酬の70%。

各サービスの基本報酬である所定単位の70%の算定となり、つまり30%減算されます。

(あくまで、「基本報酬」に対してであり、その他の加算等を含めた単位に対するものではありません。)

 

定員超過利用減算と判断される基準には2つあります。

1つは「1日あたりでの超過

2つ目は「3ヶ月平均での超過」です。

 

①1日あたりでの超過で判断

この場合、超過しているその日1日について利用者全員分が減算対象となります。

 

・障がい福祉サービス

生活介護・自立訓練(機能訓練)・自立訓練(生活訓練)・就労移行支援・

就労継続支援A型・就労継続支援B型

●1日あたりの利用実績が

利用定員50人以下の事業所:利用者数>利用定員×150%

利用定員51人以上の事業所:利用者数>(利用定員-50)×125%+75

療養介護・短期入所・施設入所支援

●1日あたりの利用実績が

利用定員50人以下の事業所:利用者数>利用定員×110%

利用定員51人以上の事業所:利用者数>(利用定員-50)×105%+55

 

・障がい児福祉サービス

児童発達支援・医療型児童発達支援・放課後等デイサービス

●1日あたりの利用実績が

利用定員50人以下の事業所:利用者数>利用定員×150%

利用定員51人以上の事業所:利用者数>(利用定員-50)×125%+75

福祉型障害児入所施設・医療型障害児入所施設

●1日あたりの利用実績が

利用定員50人以下の事業所:利用者数>利用定員×110%

利用定員51人以上の事業所:利用者数>(利用定員-50)×105%+55

 

②3か月平均での超過で判断

この場合、超過していた3ヶ月の次の月1カ月間についての利用者全員分が減算対象となります。

 

・障がい福祉サービス

*生活介護・自立訓練(機能訓練)・自立訓練(生活訓練)・就労移行支援・

就労継続支援A型・就労継続支援B型

●利用定員11人以下の事業所:過去3か月間の平均利用人員>(利用定員+3)×125%

つまり 過去3ヶ月の延べ利用者数>(利用定員+3)×過去3か月間の開所日数

●利用定員12人以上の事業所:過去3か月間の平均利用人員>利用定員×125%

つまり 過去3ヶ月の延べ利用者数>利用定員×過去3か月間の開所日数×125%

*療養介護・短期入所・施設入所支援

●過去3か月間の平均利用人員>定員×105%

つまり 過去3ヶ月の延べ利用者数>利用定員×過去3か月間の開所日数×105%

 

・障がい児福祉サービス

*児童発達支援・医療型児童発達支援・放課後等デイサービス

●利用定員11人以下の事業所:過去3か月間の平均利用者数>利用定員+3

つまり 過去3ヶ月の延べ利用者数>(利用定員+3)×過去3か月間の開所日数

●利用定員12人以上の事業所:過去3か月間の平均利用者数>利用定員×125%

つまり 過去3ヶ月の延べ利用者数>利用定員×過去3か月間の開所日数×125%

*福祉型障害児入所施設・医療型障害児入所施設

●過去3か月間の平均利用者数>利用定員×105%

つまり 過去3か月間の延べ利用者数>利用定員×過去3か月間の開所日数×155%

 

例外:定員を超えて受け入れることができるケースについて
定員超過は、指定基準において「災害、虐待その他のやむを得ない事情がある場合」に 可能とされています。
具体的には、
障がいの特性や病状等のため欠席しがちで、定期的な利用を見込むことが難しい障がい児 に継続した支援を行う必要がある場合、
障がい児の家庭の状況や、地域資源の状況等から、当該事業所での受け入れをしないと、障がい児の福祉を損ねることとなる場合、
などが挙げられますが、それぞれの「やむを得ない事情」については、これらの理由のほか、各都道府県等において個別の事情ごとに判断されます。
また、就労アセスメントのための就労移行支援事業所の利用者についても例外となります。

 

1日当たり? 3ヶ月の平均? 延べ利用者数?

色々表現が出ていてわかりづらいと思いますので

以下の例をご参考に、ご自身の事業所について、ご確認ください。

 

<例1>

定員20人 ひと月の開所日20日 の 生活介護サービス事業所において。

1日あたりでの超過の判断では

利用定員50人以下の事業所にあたりますから

利用者数>利用定員×150%

20人 × 150% = 30人

「1日当たり30人」が判断の基準になります。

30人の利用者の日は減算になりません。

31人の利用者の日は超過していますので、減算となります。

超過した日は、その日の利用者全員分の基本報酬の単位数が70%に減算されます。

 

3か月平均での超過で判断では

利用定員12人以上の事業所にあたりますから

過去3か月間の平均利用人員>利用定員×125%

つまり 過去3ヶ月の延べ利用者数>利用定員×過去3か月間の開所日数×125%

を考えます。

(平均利用人数を算出する計算の仕方でももちろん良いのですが、割り算がたくさん出てくると小数点以下の人数の考え方がややこしくなるので、延べ人数で計算するとすっきりしやすいのではと思い。このように計算しています。)

 

ひと月の開所日数20日 → 3か月間の開所日数=20日×3=60日

利用定員20人×過去3か月間の開所日数60日×125%=1,500人

「過去3か月間の平均利用人数:1,500」が判断基準になります。

(今回は例なので、どの月も同じ20日開所としていますが、実際の計算では、その月ごとの開所日数を入れてくださいね。)

 

現在10月で、過去3か月の延べ利用者数が以下の場合

7月 520人

8月 480人

9月 520人

10月 420人

7月・8月・9月の3か月の延べ利用者数は520人+480人+520人=1,520人

基準となる1,500人を超過していますので、減算となります。

超過していた3ヶ月の次の月1カ月間、この場合、10月の利用者全員分420人分の基本報酬の単位数が通常の70%となり、通常の30%減算となります。

 

では、次の11月の報酬について考えてみます。

この場合、過去3ヶ月の延べ利用者数は8月・9月・10月について考えることになり

480人+520人+420人=1,420人

基準となる1,500人を超過していないので、11月は延べ利用者数420人分の基本報酬に減額はありません。

 

<例2>

多機能型事業所においては、それぞれのサービスごとに、利用定員の基準の判断をします。

 

利用定員10人の放課後等デイサービス

利用定員10人の児童発達支援

ひと月の開所日20日 の 多機能型事業所の場合

 

1日あたりでの超過の判断では

利用定員50人以下の事業所にあたりますから

利用者数>利用定員×150%

放課後等デイサービス: 10人 × 150% = 15人

「1日当たり15人」が判断の基準になります。

児童発達支援: 10人 × 150% = 15人

「1日当たり15人」が判断の基準になります。

放課後等デイサービス・児童発達支援共に、

15人の利用者の日は減算になりません。

16人の利用者の日は超過していますので、減算となります。

超過した日は、その日の利用者全員分の基本報酬の単位数が70%に減算されます。

 

3か月平均での超過で判断では

放課後等デイサービス も、児童発達支援 も、

利用定員11人以下の事業所にあたりますから

過去3か月間の平均利用者数>利用定員+3

つまり 過去3ヶ月の延べ利用者数>(利用定員+3)×過去3か月間の開所日数

(平均利用人数を算出する計算の仕方でももちろん良いのですが、割り算がたくさん出てくると小数点以下の人数の考え方がややこしくなるので、延べ人数で計算するとすっきりしやすいのではと思い、このように計算しています。)

 

ひと月の開所日数20日 → 3か月間の開所日数=20日×3=60日

利用定員(10人+3)×過去3か月間の開所日数60日=13人×60日=780

「過去3か月間の平均利用人数:780」が

放課後等デイサービス・児童発達支援それぞれの判断基準になります。

(今回は例なので、どの月も同じ20日開所としていますが、実際の計算では、その月ごとの開所日数を入れてくださいね。)

 

放課後等デイサービスにおいて

現在10月で、過去3か月の延べ利用者数が以下の場合

7月 260人

8月 280人

9月 260人

10月 240人

7月・8月・9月の3か月の延べ利用者数は260人+280人+260人=800人

基準となる780人を超過していますので、減算となります。

超過していた3ヶ月の次の月1カ月間、この場合、10月の利用者全員分240人分の基本報酬の単位数が通常の70%となり、つまり通常の30%減算となります。

 

では、次の11月の報酬について考えてみます。

この場合、過去3ヶ月の延べ利用者数は8月・9月・10月について考えることになり

280人+260人+240人=780人

基準となる780人を超過していないので、11月は延べ利用者数240人分の基本報酬に減額はありません。

 

児童発達支援についても、定員、減算の要件は同じなので、同様に考えることになります。

 

このように、毎日の利用者数が大きな減算に繋がることがありますので、毎日、確実に利用者数を把握していくことがとても重要になります。

まず、利用者の利用予定をしっかり把握し、そして、実際の一日の利用者数を記録することで、3ヶ月の延べ人数の把握もしやすく、減算を回避することに繋がっていきます。

毎月の報酬の請求時に、障害児通所施設においては、令和4 年2月28日付厚生労働省事務連絡「障害児通所支援における定員超過利用減算の取扱いについて」別添の「定員超過利用減算対象確認シート」を用いると、定員を超過して利用者を受け入れていないかどうか、定員超過利用減算に当たらないかどうかの確認がしやすいと思われます。

定員超過利用減算対象確認シート」を用いるなどし利用者数を確認した結果、もしも減算となった場合は、国保連合会への請求システムへの反映を忘れないことが大切です。

もし、忘れていて、減算せずに通常通り請求した場合は、「過誤申立」を行うことで当初請求を取下げることができます。

「過誤申立」の手続きをせずにそのままにしていると、実地指導の際に指摘されたり、更には、報酬の返還や追徴金、行政処分などにつながる可能性があります。

速やかに「過誤申立」の手続きを行い、根本的には、減算となる状況を解消できるよう手を尽くすことが望まれます。

定員超過利用減算を含む「減算」の対象になるということは、指定時の基準を満たしていない状況である、ということです。それは、利用定員を超えて、障がい福祉・障がい児福祉サービスの提供を行ってはならないという原則から外れており、何より、利用者に対して適切なサービスが提供できていないということになります。

利用者の満足が従業員の満足にも繋がり、事業の継続にも繋がっていくかと思われますので、管理者・サービス管理責任者はもちろん、従業員みんなで考えながら、日々の確認を続けることが大切なのではと思われます。

 

定員超過利用減算について、さらにご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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